「前の職場でいろいろあってさ、今は調理の仕事休職中。
繋ぎで全然違う職種でバイトしてんだけど、やっぱり調理の仕事やりてぇなって思って…
来週、面接なんだよね」
「そう……」
夜空を仰いだ彼の表情は見えなかったけれど、何だか落ち込んでいる気がした。
「面接、うまくいくと良いわね…」
「うん、ありがと」
当たり前だけど、彼には彼の人生があって、
彼には彼なりの苦労や悩みがある。
自分ばかりが不幸だなんて思ってるわけじゃないけれど、
周りがみえなくなっているのは確かかもしれない。
「……って、俺ばかりずるくない?!
次は俺が質問する番だよ!」
「なっ、ち、近い!」
いきなり顔を覗き込むように近付けてきた。
人懐こい大きな瞳。
まるで犬みたいだ。
昔祖父の家で飼っていた雑種の犬を思い出す。
私によく懐き、飛びかかるようにじゃれてきた。
「…タロウみたい」
「え??」

