「俺と付き合おう。」
本当にいいのだろうか。
研修医の言葉に一気に現実味を帯びてきて、
この先どのくらい生きられるか分からないあたしと付き合うより、
きっともっといい人がいるはず。
「医者と患者が付き合っちゃいけないなんて法律ねえだろ。」
身体を離してあたしの顔を見つめる。
「そうじゃなくて、」
「じゃあなんだよ。」
少し不機嫌そうに眉を寄せる。
「あたしでいいのかなって、」
「は?」
眉間の皺が深くなってく。
「他にもっと、「おい。俺の話 聞いてなかったのかよ。」
あたしの言葉を遮る。
「俺はお前が好きだ。
お前がいい。」
見つめる目の真剣さに、
心があったかくなるのが分かる。
「あたしも、すき。」
そう言ったあたしに満足そうに笑う。
「あんまりごちゃごちゃ考えんなよ。
不安になったら何でもすぐに言え。
俺が全部 拭ってやる。」
そう言うと優しくキスをくれた。
「な?」
…こいつ、甘い。
「うん、」
顔が見れず俯く。
「ははっ、何照れてんだよ!」
「だっ、て、あんたが!」
あたしの顔を覗き込み、
「祐介。」
「え?」
「俺の名前。
2人の時はそう呼べ。」
初めて聞く研修医の名前に
素直に、似合ってるな、と思った。
「祐、介。」
「なに?」
今までにないくらい優しい目で見つめられて、恥ずかしくなった。
「っ、仕事中でしょ!
早く戻りなよ!」
「はいはい。」
さっきまで泣いてたくせに、
いきなり強気になるあたしにも
嫌な顔一つせず、むしろ笑ってる。
「また帰る時 寄るから。
寝とけよ。」
「んっ、」
また軽いキスをして頭をくしゃっと撫でてから祐介は病室を出て行く。
頭に残った温もりが、心を温める。
その日はすごくよく眠れた。

