スッと指揮者のように杖を一振り。
すると、氷が張る様子を早送りして見ているかのように、窓ガラスが元に戻っていく。
そしてもう一振り、アキが全体を大きく掻き回すような動作をすると、床一面に散らかった物が四方八方に飛び交い、元あった場所に帰って行った。
1分もかからないくらい、そのくらいの短時間で、部屋はすっかり元通りになった。
暖炉の火も、何事もなかったようにパチパチと心地の良い音をたてている。
「相変わらずアキは器用だなあ。俺には真似できん!」
ヨウさんはハッハッとご機嫌そうな声を上げながら、元通り薬草の山の向こうに隠されているキッチンに向かって行った。
「さ、みんな、杖を下ろして座ろう。」
いつもの間延びした喋り方ではなく、キッパリとそう言い切ったアキにお兄ちゃんまでもがすんなりと従って席についた。


