ミユウは自分の耳を疑った。
でも、今ハルトと反応が被ったよね?ハルトにも幻聴が聞こえたのかな?
「だから、お兄ちゃんやめて!
これが必殺の呪文。」
「ほんとに、それで、うまくいくの?」
「もちろんうまくいくさ!
いいかい?
5秒間だけミユウちゃんの魔力を支えるから、その間に思いっきり叫ぶんだ。」
どうやらハルトは呆れて言葉を失っているようだ。
でも、もうここまできたらやってみるしかない。ミユウはヨウさんに向かって大きく頷いた。
「さあ、ゆっくり息を吸って。
三つ数えたら始めるよ。」
言われた通りに深く息を吸い込む。
「3、2、・・・
1、今だっ!」
その瞬間、身体にかかっていた重みが嘘のようになくなり、それを合図にミユウは大きな声で叫んだ。
「お兄ちゃん、やめてーー!」
膜の中で反響することもなく吸収された自分の声を聞いて、ひょっとして物凄く無駄なことをしてしまったのでは、という不安が込み上げてきた。杖も振らずに、ただ叫ぶだけ。これのどこが魔法だというのだろうか。
「おっと、崩れるぞ。」
「ごっごめん、そうだ、やり直さないと。」
ハルトの目線を追っていくと、ドーム型に張られた膜の頂上あたりにひびが入っていた。そして、それはみる間に広がっていく。
「いや、その必要はないよ。」
ミユウはギュッと杖を握り直したが、その手ごとヨウさんに掴まれてしまった。
「え、上手くいったの?」
風が止んでいるのを見ればわかるようなことだが、先ほどの呪文が発動したことがとてもじゃないけれど信じられなかった。


