「せめてここがどこか分かればなあ」
何か手がかりになるものはないかと部屋を見回す。
壁のいたるところに干した植物が吊るされており、地図のようなものは一切見当たらない。
よく見ると部屋中がごちゃごちゃと物で溢れかえっていた。
それどころか、キッチンのカウンターの上にも所狭しと薬草の詰まったビンが積まれており、ここは料理というよりは魔法薬を煎じるのに使われているようだった。
「えっ、こんなのが家庭にあるなんて!」
ビンに貼られている薄汚れたラベルを読んでみると、中身はそうそう手に入らないような薬草ばかりだ。
「どうもこの家には気が散るものが多くて困るわ・・・」
「何ブツブツ言ってるんだ?」
「わっ!!」
急に後ろから話しかけられ、文字通り飛び上がったミユウ。
振り返るとそこには呆れ顔のハルトと・・・
「あっ・・!あの、勝手にお邪魔してすみません!!」
おじさんらしき男性が立っていたので慌てて挨拶をする。
「フッ・・相変わらず変わったヤツだな。」
「って、えっ?」
「コラコラ、間違えて連れてきてしまった客人にその態度はないだろう。」
思わぬことを言われて困っていると、おじさんが初めて口を開いた。
穏やかな調子だが、どこか棘があるように感じるのは気のせいだろうか。