「さあ、ゆっくり、手に力を入れてみて?」
ミナトの腕においた手に力を込める。
もともとどのくらいの握力があったのか思い出せないけれど、寝起きに力が入らないのをこじらせた感じだ。
「無理もない。一日中筋肉を使ってなかったんだから」
そう簡単になまってしまうものなんだな、と変なところに感心していると・・
「うわあ、これ、ミユウがやったのー!?」
というなんとも呑気な声がリビングに響いた。
「ア、アキ!?」
驚いてさらに力が入らなくなってしまったではないか。
ミユウ以上に傷つき、消耗していたはずのアキが、元気いっぱいの姿で目の前に現れたのだ。
驚かない訳がない。


