足元を見て歩いていたミユウは、ハルトが止まったことに気がつかず思いっきりぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい。」
怒られる覚悟で恐る恐る顔を上げると、ハルトは前を見つめて険しい表情をしていた。
「静かに。」
目の前にあるのはなんの変哲もない扉だった。
何か牢獄のような場所を想像していたので意外だった。
ここにアキが?と声に出しそうになったが、慌てて声を飲み込む。
その時、部屋からガタガタという地響きのような音が聞こえてきた。
まるで家具という家具が揺れて音を立てているようである。
「中で何が・・?」
今度は我慢できずに聞いてしまった。
「アキが呪文と闘っているのだろう。
思ったより手こずっているな。」


