「わかった。これ以上は言わない。だけど家庭教師のこと、考えておいて。」
「うん。変なこと言ってごめんね?」
「いいんだよ。気にしなくて。」
そう言ってミナトは乱暴にミユウの頭を撫で、部屋に戻って行った。
お兄ちゃんはいつも私に一番いい選択をしてくれた。
私にはお兄ちゃんしかいなかったから。
でも、でも。突然現れたアキに対する思い入れがあるのも事実だった。
好き、嫌いでは言い表せなくて。
理解してくれる存在がどれだけかけがえのないものか、思い知らされたのだ。
「失いたくない」という言葉は大それたようでいてもっと身近にあるものなのだ。


