「ーーうん。ぜーんぶ聞こえてたよ!」
「わわわっ・・全部忘れて!じゃなきゃ記憶を消すから!」
ミユウが真っ赤になっていることは、見えないアキにも容易に予想がついただろう。
「ーーもーっそんな物騒なこと言わないでよ。」
「はあ。早く気づいていれば・・」
腕の確かな人がかけた魔法は、かかっていること自体がわからないほど自然に馴染む。
このような通信魔法は、双方が術がかかっていることを理解しないと完成しない。
だからこれまでミユウがアキの声を聞くことがなかったのだ。
花びらをじっくり眺めていたにも関わらず、保存の呪文以外にかかっているとは思ってもみなかった、ミユウの甘さが招いたことだった。


