「新学期早々遅刻とかやめろよー」


スクールバックをリュックのように背負い、両手をポケットに突っ込んでウシシと笑うハル。


「ちょっと見てただけじゃん」


あたしは小さく息を吐いて、ハルのもとに歩く。


肩に提げるスクールバックの持ち手を掴んで、あたしはまたため息をついた。


2度目のため息に、あたしよりも少し身長の高いハルが隣から覗き込んでくる。


彼のサラサラの茶髪が、春の温かな風に揺れている。


「またため息ですか? 篠原 雪羽(シノハラ ユキハ)さん」


ハルの嫌な言い方にムっと眉を寄せて顔を上げると、ハルもあたしと同じようにため息をついた。


「去年の冬くらいからため息多くない? 初詣行った時とかめっちゃついてたじゃん」


「だって……」


あたしは口をつぐんで、また俯く。


だって……。


冬になると、どしても思い出してしまうんだもん。


そろそろ忘れなきゃいけないのかもしれないけど、何もはっきりしないままだから、忘れられそうにない……。