あの桜の木から駅まで、そんなに遠いわけじゃない。


普段なら、走ればすぐに到着する。


だけど、まだアスファルトにはたくさんの雪が残っていて走りづらく、普段より少し時間がかかってしまった。


バタバタと走って駅に着くと、駅にはたくさんの人がいた。


天井に下がる電光掲示板を見ると、空港行きの電車が来るまであと10分だ。


間に合ったけど、長くは話せない。


あたしは階段を駆け上り、ホームへ急いだ。


息は上がるし髪は乱れるしで、すれ違う人たちが驚いた表情であたしを見る。


ホームで左右を交互に激しく見る。


そして……。


ホームのベンチに腰掛ける、柊の姿を発見した。


ベンチの背もたれに体重を預け、少し放心状態の柊。


ド、ド、ド、ド、ド、ド。


心臓が暴れているけど、これはここまで走ってきたせいではない。


柊の横顔を見て、心臓が痛いくらいに反応したんだ。


好きだって……。


走った疲れと、柊を見た緊張で、足が震え中々うまく前へ進めない。


ゆっくりゆっくり足を動かし、柊の前に、立った。