驚いて振り返る柊。


柊は、自分の手首を掴むあたしの手を見て、細かく揺れる瞳であたしを見下ろした。


「……行かないで」


熱が高いせい?


大胆なことが言える……。


柊の眉間が、少しだけピクリと動いた。


布団から伸ばした手が、高熱で微かに震える。


「柊……どこにも行かないで」


「…………」


「もう……どこにも……」


掠れる声。


瞼も重くて、今にも意識を手放してしまいそうだ。


熱があるとわかった瞬間から、一気に体が弱気になってる。


寂しくて寂しくて、ひとりになったら死んでしまうんじゃないかって思った。


柊が、ゆっくりあたしの手を掴み自分から離す。


そして、ギュッと、握り返してくれた。


「うん。どこにも行かないよ。約束する」


「本当に……?」


「ああ……。本当に」