千種が後ろから出てきて私の前の長身の人を見て、驚いた顔をした。


「帰んの?」


伊月と呼ばれた人はふわぁと欠伸をしながら聞いてきた。


「ああ。伊月来るならもっと早く来いよ」

「……寝てた」

「はあー…相変わらずマイペースだな」


呆れたように千種は笑う。

そんな顔もするんだな~と思わず見とれたのは気のせい……だと思う。






「……うん。来れば良かったかもね」




ぼそりと耳元で囁かれた声に首を傾げて見上げたが、伊月さんの視線はすでに千種に向いていた。


その声に千種は気づかなかったらしく


「ちとせ、送る」

「え!?大丈夫ですよ」

「いいから駅行くぞ」


千種は私の手を掴み、空いている手で伊月さんに手をふった。


「ち、千種」

「……なに。」

「あの、手。」

「ああ、」



何事もないように手を持ち上げると一言






「迷子になったら困るだろ?」




そう言ってニヒルな笑みを浮かべた。





「なりませんよ!!!!」


ちとせが抵抗して手を離そうとすると
指を絡めて…所謂恋人繋ぎでぎゅっと握ってきた。






「……離すか、ばーか」





千種の呟きはちとせの耳には入らず消えた