冷や汗がタラァーと首筋を流れる。
椎名先輩と目が合うと先輩はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
そして私の顎をクイッと持ち上げた。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!!先輩!!」

「あぁ??」

「ダメですって!!」

「麗華に決める権利なし!!」

「困ります!!」

否定してる間にも先輩の顔が徐々に近づいてくる。

「だめだめだめだめだめだめ…」

「うるせーよ。キスする時くらい黙ってろ。」

「私、望んでません!!」

「俺様が許可してんだぞ?要らねぇーの?」

「要りません!!全く必要ないです!寧ろ迷惑ですから!!」

キスを拒むのに必死だったため自分が先輩にどんな口調を聞いてたかなんて気にしてなかった。
言い終えたあと後悔。

「いい度胸してんな?麗華。」

再び出てきた先輩の不敵な笑み。
そして耳元で囁かれる。

「うるさいその口…頂くぞ?」

そう聞こえ瞬間、椎名先輩と私の口が触れた。

「麗華様!!」

…と思った。
触れる直前、帰りの遅い私を心配して吾廉が屋上へ様子を見に来てくれた。

「吾廉!!」

力が一瞬抜けた椎名先輩を強く押し返しやっと開放された。

「チッ…タイミング悪ぃなあ?仕え魔。」

椎名先輩は吾廉に向かってそう言った。

「昴琉様!麗華様に何をしようとしたのですか?」

「見てわかんねぇの?てか、仕え魔なんだからしっかり主人から目を離さねぇもんじゃねーのかよ。」

椎名先輩はそれだけ言うと屋上から出ていった。

「ありがとう吾廉。」

「申し訳ございません。来るのが遅くなりました。」

「いいのよ。私こそ遅くなってごめんね。」

「いいえ。…ところで、旦那様とのお話はどのようになりましたか?」

さっきまで少し忘れていたけどこの件。
私たちだけで済ませていいものなのか。