「優!ごめ、ちょっと長引いちゃって、、、」

部活を終えて、僕は息も整えずに図書室に飛び込んだ。

「大丈夫。私も用があったから。帰ろう?外も、もう随分暗いわ」

優は広げていたものをしまい、帰る準備をする。
そう、秋の夜長とはよく言ったもので、あっという間に日は落ちる。

でもさ、待っててくれた、可愛い可愛い彼女が目の前にいて、触らずに帰るなんて、僕に出来るわけ無い。

優はきっと気づいてないだろうけど、僕がこうして迎えに来たとき、とびきりの笑顔でむかえてくれる。
優が待っててくれると思うと、部活も頑張れる。

「ああ、うん。でも、さ、、、ちょっとだけ、いい?」

僕はエナメルバッグと道着を床に置いて、机を回って優の方へ行った。

「遊君?」
「あの、さ、ちょっとだけ、だから」

優の持っていた物を取って机に置いて、優を引き寄せ、肩口に頭をうずめた。

くすぐったいのかちょっと動いたけど、少しすると何も言わずに頭を撫でてくれる。

僕よりずっと小さい手が、丁寧に、優しく、壊れ物を触るみたいに。
優のこの撫で方が大好きなんだ。
ちょっとくすぐったくて、でも気持ちよくって、すごく幸せな気持ちになる。

「優、もうちょっとだけ、いい?」

細い腰に手を回し、強く抱きしめた。
驚いたみたいだったけど、撫で続けてくれた。
抱きしめあって、お互いに頭を撫でた。
優の髪は、長くて綺麗で柔らかくていい匂いでサラサラで。
こうやって、指で梳くみたいに触るのが気持ちよくて。しばらくそうしてた。
もっとしていたいけど、あんまり遅くなってもだめだし。

「ごめん。ありがとう。ちょっと疲れちゃって」
「ううん。ちょっとは元気になった?」
「うん。もちろん。ありがとう。優」

本当はちょっと嘘なんだけど。
疲れてたけど、優の顔見れただけでそんなの吹っ飛んでる。
そんなこと知らない優は、ほんと嬉しそうで。

やっぱり、もう少しだけ、いいよね?
可愛い過ぎる優が悪いんだ。
顎に手をかけて、上を向かせる。
急に正面から見つめあったから、優の顔がいっきに赤くなる。
若干目も潤んじゃったし。
ああ、もう本当可愛い。

もう少しだけ、もう、少しだけ。
そえている方と反対の手で優の前髪を払い、間からのぞく額にキスをした。
その後は両方の瞼に、頬に。
順に降りていき、最後に唇へ。
何度か優しく触れるキスをして、ゆっくりと体を離した。
屈んで、おでこをかるくくっ付ける。
痛く無いように、ゆっくり、優しく。
こうしてしまえば、優は顔を隠せないからね。
照れ顏とかめちゃくちゃ可愛いのにすぐに隠しちゃうから。

ねえ、僕にだけ、見せて?