でも、
今はそんなこと気にしてられず、
早くでたい、それしかなかった。


ふぅ。


ようやく出ると、
疲れきっていたので、とりあえず
近くのベンチへ腰を下ろした。
 

「足?!
 大丈夫?」

見ると、ヒールが折れているのと
かかとの部分と膝が擦れて
怪我していた。


「う、うん。大丈夫!」


「待ってて、今靴買ってくる。
 なんでもいい?」


「あっうん。
 ありがとう!」


とりあえず、バッグからティッシュと
絆創膏を取り出して手当する。


走っていったのか、息切れしている
土屋くんが見えた。


あぁ、何やってんだろ。


迷惑かけてばっかじゃん。


「おんぶするよ。」


「え、いいよ、いいよ!
 重いし、潰れちゃうよ!」


「潰れるって、
 そんなにやわじゃないから笑

 おねがい。

 おんぶさせて、危なっかしい。」


そう言ってひょいと担がれた。

そんなこと言われると反論
できなくなるよ。

そうして、おんぶされたまま
駅へ足を運ぶ。


駅へつくと、
レールの故障により、
本日は営業停止と紙がはられている。


もちろん、閉まっていて、
ホームにもはいれない。


お互いに、遊園地で遊びすぎて
残金も少なくタクシーで帰るお金
の余裕もなかった。


ふたり合わせてもとなり町までしか
行けない。
 

仕方なくきょろきょろ二人で
一晩しのげる場所を探すことに
なった。


でも、そうそう安い宿なんて
見つからない。


…ラブホ。


ふいに、土屋くんから出た
その言葉に驚いた。
 

確かにラブホは安いって真から
聞いたことあるけど、
でも、ラブホってまずくないかい?


そんなところ入ったことないし、
ちょっとこわい。


「ねぇ、ラブホ入ろ?
 明日の午後には電車動くみたい
 だしさ、残金的にもそこしかないし。
 さすがに野宿はまずいでしょ?」


なんていう土屋くん。


でもここはそれに従うしか道は
なさそうだ。


かいに連絡を入れた。


心残りは
弟たちだけで大丈夫かどうかだ。  


不安でしかたがない。


こういったことはめったにないし。


でも、かいからの返信で
“任せろ笑”ときたのを確認して
安心した。


ホテルはやっぱり一部屋しか
借りれず、もちろんベッドもひとつ
しかない。


いくら何でもこの状況は
緊張する。


疲れたのか緊張か、
それともその両方なのか
口数も減りソファにふたり腰を
掛けた。


ふいに土屋くんの口が開いた。


「風呂、先いいよ。」