「…絶対に戻って来い」


「ふふっ、わかってる


必ず戻ってくるよ。」


素直に"寂しい"、"心配"って言わないところが翔聖らしい


不器用で、無愛想


だけどそんなところも今は愛おしい


お互いがゆっくり体を離すと、鼻と鼻がくっつきそうな位近くで目が合う


「終わったら連絡。」


「うん」


「………」


「………」


「行ってくる、ね?」


「…あぁ」


目を伏せて翔聖が頷くと


──チュッ


一瞬唇が重なって、


「…余所見すんなよ」


ふいっと顔を逸らしながら言うと


颯爽と私に背中を向けて歩いて行った


翔聖っていつもは大人びてるのに時々子供みたい


私も…だけど


恋を、人を愛する事を知ってしまったら


年齢とか性格とか、そんなの気にしてられなくなるんだね


素直じゃなくても、素直になる


弱かった自分を


強くしてくれる


魔法みたいな感情。


もちろん、人を弱くする事だってある


だけど私は翔聖と居たいと思う。


悲しい事があっても居たいと思う。


だって"好き"だから。



ふぅ、と息を吐き出して緩んだ頬を戻せば


私も翔聖に背中を向け歩き出した


一歩踏み出す度に見た目が少し大人になった姿が見えてくる



一歩


また一歩…


残り30m位の所で、ふと1人が私の姿に気づいたのか立ち止まった


周りの3人もこっちを向いて立ち尽くしてる


そして…


「「「わぁぁぁぁあ!」」」


…!?


突然の奇声。


驚いて足を止める私、それに対して向こうは


「「「紅愛ーーー!!」」」


ダダダダ!!


と、まるで効果音がつくくらい勢い良く坂を下ってきた


嬉しい


うん、嬉しいんだけど…




…私、このまま死んだりしないよね?



止まるよね?もちろん


まさか突っ込んできたりなんて…


しないよ、n………



「わっ!!!」


「ぎゃー!!」


「紅愛避けてぇぇえ!」


__ガンッ!!


目の前に3人の顔がドアップで写ったその瞬間


視界は揺れたと思えば体が後ろに傾き…


叩きつけられたとさ。あはは。


「あんたら………アホかぁ!!」