しばらく歩くと見えてきたのは


"夜影ーnight shadowー本拠地跡"


そして…


「おいツカサ!お前身長盛ってんじゃねーよ!」


「はぁ?これヒールっていうの!そんなこともしらないの?ホントバカね、ツバサは」


「んだと!?チビの癖に!」


「………セイラもヒールだけどな。」


「ルイ!余計な事言うなバカ!アホ!鈍感!」



…懐かしい、騒がしい奴ら。


まだ少し遠いから私には気づいてないけど


バカなやり取りは紛れもなくアレクトの絆


2年も会ってないのに相変わらずだ。


思わず口元が緩んだ


「ここで大丈夫、ありがとう」


「…あぁ。」


立ち止まり見上げれば漆黒の瞳が私を映している。


「じゃあ行くね」


繋がれたをゆっくりと離し、軽く手を振ると


彼らに向かって歩き始めた





…が。



───グイッ


「……………っ」


突然、左手を強く後ろに引かれ


体が後ろに倒れていく


思わず目をつぶった時、


触れたのは地面ではなく温もり


背中と後頭部に回された手。


愛するあの人の香りが近くでして


これは…


「翔聖………?」


そう呟くと、


「………っ」


より一層抱きしめる力が強くなった


「どうしたの?」


「………………」


…え、無視ですか。


何か言ってくれないとわからない、けど


もしかして…


甘えたいモード?


でも、こんな屋外でなるのは珍しい


何か不安、とか…?


「翔聖ーっ」


「…………」


「おーい?」


「…………」


ダメだこりゃ。


そういえば数十分前にも同じような会話をしたような…


その時は立場がま逆だったけれど


「翔聖ー、遅刻しちゃうよー」


「………」


んもーっ!


「翔聖、行くのやんなっちゃう」


「…ん、行くな」


おいおい。まじか。


そうは思ったけれど


「…ちゃんと戻ってくるから


この後、行かないといけない場所もあるでしょ?」


諭すように、広い背中に手を回しながら言う


私だって翔聖が聖蘭の仕事に行く時すごく不安だったからその気持ちは痛いほどわかる


私は引退してもう出来る事はない、その背中を見送るだけ


もう帰って来なかったらどうしよう


大きな怪我をしたらどうしようって


不安で不安で、苦しかったから


…今日は仕事ではないけど、


私達が戦っていた記憶は確かに、刻まれていた