「…紅愛、準備できたか」


「うん。お待たせ、行こう」


─事件の終結から2年の月日が経った。


春、私達は高3になって


それぞれの未来に向かって1歩1歩、進んでいる


「うわぁぁぁあ!奏矢さん!泣いちゃったよ!?どーするのー!これ!!」


「おぎゃぁー!おぎゃあーー!」


「ちょ、泉君!走り回るな!危ないっつーの!」


「お前が騒ぐな泉!」


「泉うるせぇ…」


「うっ、えぇっ…!?


ノエルさん、そんなぁ…


って、お前ら手伝えよ!!」


「むーりー」


「はぁ?無理だし。勉強中」


「ほらほら喧嘩するな、


聡太ーsoutaーが怖がるだろ?なぁ?」


「ひゃぁ〜」


「「(パパやべぇ…)」」


そうそう、1年半程前、奏矢とノエルさんが結婚したんだ


その1年後、無事に赤ちゃんが産まれて…


もうその子がすっごく可愛いの!


ちょっと人見知りだけど奏矢とノエルさんに似てて


絶対将来イケメンになると思う


そして、輝と蒼桜のメンバーも進路を決めていて


蒼桜の皆とナギサ、透真は進学


泉と蓮は家を継ぐために修行


翔聖は大学で経営学を学んで、ゆくゆくは綾瀬グループを継ぐそう。


それぞれが将来に向かって努力してる


だけど私は…まだ決められてない


ホントに焦ってる


焦って、わかんなくなって


ストレスを抱えすぎて爆発したのがこの前の話


…なんとか翔聖が落ち着かせてくれたみたいだけと


正直私、全然覚えてない…。


今は少しだけ息抜きをしながら考えてる所なんだ


「じゃあ皆行ってくるね!」


「おーいってら!」


私と翔聖は今日はお出かけ。


と、言ってもデートってわけではなくて


…ちゃんと全てにケリをつけに行くんだ


気合を入れるため、キュッと口を結ぶと


隣の人が笑った気がして、見れば


「そんな固くなるな、落ち着け」


…余裕そうな翔聖。


「無理!そりゃ緊張位するよ…





アレクトに会うんだから…。」


会うのは2年ぶり、事件以来だ。


夜影で過ごした時間は短くても


その時、命を預けあった仲間。


忘れることは出来なくて、でも会う勇気も無かった


…どーせ私は臆病だよ。ばーか!


ふんっと顔を横に向けて拗ねれば


「悪かったって」


「………」


「オイ」


「………」


「…紅愛」


「ヤダ」


私の顔をのぞき込む翔聖。


余裕そうなのにほんのちょっとだけ寂しそうな顔をしてるんだろうな、


なんて考えて口元が緩む


すると


「いつまで拗ねてんだよ」


と、いう呟きと共に


右手に包まれる様な温もりを感じた


「…えへっ、やっと繋いでくれた」


「…っはぁ?」


呆れた顔をした翔聖に私が笑えば


──サーッ


春の、暖かく、でも力強い風が


私たちの間を通り抜けた