「……わかった」


そう言った翔ちゃんは


「………っ」


私の頭の後ろに手をあて、ぐいっと引き寄せると


唇を重ねた





───私達の嘘はここから始まった



そして、今。


私は小さな公園にいる


「ねえ、河西 栞」


あの"安田 美羽"に連れられて。


「ふふっ、なぁに?美羽ちゃんっ


西条さん見つかりそうって輝が騒いでるのにぃ


なんでそんな顔怖いのぉー?」


「アンタだって同じよ。


それにその喋り方キモイんだけど」


そう言われて、少し顔が引き攣ってしまった


…はぁ


だから勘が鋭い人は嫌いだ


「…ふんっ。それで?


"殺されかけたミウちゃん"が今更何の用?」


笑顔を崩し、真顔でそう尋ねると


ミウは怖気づく事も無くふぃっと顔をそらした



「…別に。もうすぐ紅愛が帰ってくるから。




わかってるんでしょ?」



…言われなくてもわかってる


もう、翔ちゃんを開放しなくちゃいけない事くらい


「桐島君は大切なアンタを悪者にしてまで


紅愛と居たいと思ったんだよ」


…知ってる、知ってるよ


私は輝の嫌われ者


私が聞いて苦しむような情報はご親切にメンバーが教えてくれるから


…そこまで見てるなんて、ホント派手な癖に頭はいいんだから、ムカつく


「うざいってば。部外者のクセに」


あーあ、なんで私ってばこうなんだろ


「…そうね、呼び出して悪かった。」


真顔で私を見つめたあと、


後ろを向いて歩き始めたミウだったけど


あ、そうそう、と呟いて


再び振り返って私と目が合った





「アンタが無実な事、私が証明したから」


「え…」


なんで、それを…?


知ってたの?



「犯人に自白させた。輝の皆も知ってる。


アンタ、私と同じで不器用だから


何となく同情した


…じゃ、がんばって




栞」



「…………………」


何よ。なんなのよ…


私の視界がボヤける


だけどその頃にはミウはもう居なくて。


どこまでもムカつく奴ね、本当に


ふと見上げた空は、


見たことが無いと思えるほど


青く澄んでいて


…やっと、私の世界に色が戻ってくる


そんな気がした


「ふぅ…」


前を向いて、小さく息を吐いて携帯を開いた







"翔ちゃん、話したい事があります。


夜中の2時、私達の場所で待ってるね"




やっと終わるんだね


小さく微笑んで、私は歩き出した






ねぇ、翔ちゃん。


沢山迷惑かけてごめんね


翔ちゃんはもう私の事嫌いかもしれないけど


それでも私は翔ちゃんの事が好きだった


…正直、今でも好きだけど


いつかきっと、時間はかかるかもしれないけど


ちゃんと思い出にするから


その時は…また幼なじみになってくれるかな?






翔ちゃん、


好き


大好きだよ





──翔ちゃんは私の初恋でした






また、アナタが私に笑いかけてくれる日が来ますように。


END