私という意味。 -栞のエピソード-


私は、河西栞。


この前転校して王高に通ってる1年。


特別何が優れてる訳ではないけど、顔は可愛い方。


決して美人とは言われないけど私はそれでいいと思ってる


…そんな平凡な私だけど人に自慢できるようなことがあると言えば


輝の総長である桐島 翔聖と幼なじみである、という事


…まあ自慢なんてしないけどね。


翔ちゃんは物じゃないから。


そして、そんな軽く語っていいような人でもない


翔ちゃんは大切な人、失いたくない


ずっとずっと幸せでいて欲しい。心から思ってる


それなのに


「サヨナラ




…永遠に」


そう言い残して


金色の髪をなびかせ颯爽と歩いていくあの女を


どうしてそんな顔で見てるの…?


そんな顔をさせたのは私…?


翔ちゃんが私の嘘を見抜いているのは知ってる


だけど…それでも私を受け入れてくれたじゃん


それって私の方が大事ってことでしょ?


ねぇ、今一番近くにいるのは私だよ。


紅愛じゃなくて栞だよ。


だから…そんな絶望を浮かべた目をしないでよ


いつまでもあの女の過ぎ去った道を見ないでよ


私は…ここにいる。


私ならずっと傍にいる。


だから、自分から消えた女なんか見てないで


私を見てよ


お願いだから





その綺麗な瞳に私を映してよ。




…はっ、バカみたいだね


こんな事思ってても言わなきゃ伝わらないのに


思わず自嘲的に笑った。


だけど一番バカなのはアンタだよ、西条紅愛。


こんなに翔ちゃんに好かれてるのに自分から手放して


自分だって好きだった癖に


手に届く翔ちゃんを自分から遠ざけた


そういうところ、ホント大ッ嫌い


みんなの幸せを願いますみたいな事言って被害者面するところ。


好きなら貫けばいいじゃん


悪者にでもなればいいじゃん








───それができないのはただの弱虫だ




「翔ちゃん、帰ろ?」


腕を引っ張れば、僅かに肩を揺らし私を見た翔ちゃん。


あの女が居なくなった今、あんな喋り方する必要は無い


あれはただ、あの女を傷つけるために甘えた喋り方をきたに過ぎないんだから



「紅愛…………」


「本当に俺らを…裏切ったのか?」


後ろからそんな声が聞こえたけど、そんなの気にしなかった


確かにあの女が自分から裏切るのは想定外だった


違うって弁解しようとして、信じてもらえない


ズタズタにしてやろうと思ったのに


それができないのはまぁ残念だけど。


おかげで手間は省けた。



「倉庫に戻る」


そして、冷たく発せられた翔ちゃんの声


「「「…………」」」


いきなりの事に誰も頭がついていってないのか言葉を発する人はいなかった


同様を隠せない中、一人だけ…


透真君だけはまるで自分を責めるような顔をしていたけど。


私には、関係無い



「行こっ!」


こんなところにいつまでもいなくていい。


あの女を思い出させる場所なんて


これからは私が翔ちゃんのそばにいるから


時代は再び変わったんだ


翔ちゃんの腕を引くと意外にも簡単に前に進んで。


それをいいことに私は翔ちゃんと、後ろから着いてくる幹部を引き連れて倉庫に戻った