暫くすると、ゆっくり体が離された


翔聖は目を伏せている


だけど…いつもより近くで翔聖の顔を見て思ったことなんだけど…


薄ら目の下に隈がある


記憶を手繰り寄せると思う節はあったはず


昼間寝てる事が増えた、とか


朝が弱いはずなのに誰よりも早く起きてた、とか。


明らかにおかしかったのに…。ごめんね


私も目を伏せると


ポン、と頭に手が乗った。目線を上げると


「お前がそんな顔するな」


「でも…」


「少し、寝れなかっただけだ


それにお前の顔見てたら眠くなった」


「え、私って見てると眠くなる顔なの!?」


それってどんな顔ー…


しょげていると頭をくしゃくしゃと撫でられて


「ばかか、…安心したって事だ」


そう呟きながら手を引かれて立ち上がった


あ、これは…


「翔聖ってば照れてるな?」


「…てめぇ殴るぞ」


「殴れないくせにー」


「本気で言ってんのか」


「惚れた奴の弱み?」


「そうか」


ベチッ!!


「いったぁぁあ!!バカ!あほ!ド……むぐっ」


ほ、本気で叩いた…!額痛い!!


それに口で手を塞がれたから思いっきり睨んでやった


でも、こんなバカな会話が今は嬉しい


ふふ、と表情を崩すと翔聖もちょっとだけ微笑んだ


「寝るか」


「うん!」



そして、部屋差し出された手を握って私達は歩き始めた









そして、部屋の前


「じゃあ私こっちだから。」


翔聖の部屋は一番奥でその隣が私の部屋


翔聖の部屋と階段は一番離れてるから先に着くのは私の部屋だ。


立ち止まり手を離そうとすると


「今日はこっち」


「……………は?」


引っ張られてもう一つ奥の部屋に入れられた


早すぎて状況掴めないんだけど…ここ翔聖の部屋だよね!?


「な、なんで?」


「だってお前"誰よりも近くで"俺を支えてくれるんだろ?」


いや、言ったけど……お前は俺様か?


「…………」


「……………」


「………………」


「…………………」


「……………………わかったよ、もう」


結局私が折れるんだ。


これはもう、次の日寝不足決定だよ…。はぁ


「さんきゅ」


でもちょっとだけ安心したような翔聖を見れるなら…まぁ、いいかなー?なんてね


ふっ、と息を吐き出せば


「寒いーっ!」


張り詰めた糸が切れたように寒さが襲って来た。


どっかでブランケット落として来たし、何より暖房も入ってない部屋にいたから。


もうどうしても耐えられなくて


「ふはっ」


翔聖のベッドに潜り込んだ


…の、だけど


「つ、冷たいし!バカ!!」


人の体温を失った布団が温かいはずもなく外同様、ブルブルッと身震いする程冷たい


「布団が冷たいのは俺がバカだからって言いたいのか、お前」


ジタバタする私をよそに翔聖は普通に布団に入ってきた


この人寒くないの…!?


翔聖は唖然とする私を見てフッと笑みを零すと


「ん…こっち来い」


そう言って私を引き寄せた


「なっ、翔聖っ!?」


こ、腰に手回ってるし!


翔聖寝たら部屋戻ろうとしたのにこれじゃ…


「お前がどっか行くからだろ、ばぁか


それにこっちの方が寒くねーよ」


うっ、ばれてる…


確かに寒くはないけど、これじゃ体温が上がって暑すぎるって


1人モヤモヤと考えてると



「………………っ!?」


突然ぎゅーっと翔聖の腕に力が篭った


向かい合ってた私達だから当然距離は0cmで翔聖の胸に頭があたる


体中の体温が上がって暑い。それにすっごく甘い


そして私を覆うように首筋に顔を埋められて頭はパンク寸前。、


あぁーっ…どうしよう!!


翔聖がこんな甘えてくるのは初めてだから戸惑う


でも…少し時間が経って頭が冷静になってくると最初は恥ずかしくて何も考えられない頭がゆっくり働き出す。


勿論、今も顔から火がでそうだけど


この疑問からは逃げちゃいけないと思った


「翔聖、何かあった?」


普段じゃありえない位甘えてきたり眠れなかったり。すっごく不安そうで心配になる


すると少しだけ翔聖が力を込めた


あ…これは肯定?翔聖にしてはちょっとわかりやすい。


そんなに弱ってるのかな…?


背中をポンポンしてあげると


「…今は落ち着いてる」


少しだけくぐもった声で教えてくれた


ってことはとりあえずは大丈夫なんだよね?


良かった…。


例え、何か話せなくても、


「いつか話してね?」


いつか教えてくれるならいつまでも待つよ


すると翔聖はコクリと首を縦に振った


ありゃ、もう眠いのかな?


…最近あんまり眠れてなかったんだもんね


今日は仕方が無いから私がドキドキを我慢してあげよう


私はふふっ、と笑って


「おやすみ、翔聖」


そう言えば


「ん、おやすみ……紅愛」


ちゃんと返してくれる


私は、翔聖の香りと温もりと大きな幸福感に包まれて目を閉じた



END