「「…………ブハッ!」」
久しぶりの馬鹿なやり取りに思わず吹き出した私達
「…はー懐かし。
お前、昔に戻った見てぇ」
それから一通り笑い終えると奏矢が口を開いた
「昔?」
首を傾げると
「おう。俺達が出会った頃。」
奏矢と私が出会った頃…もう数年前か
あの時の私は全ての記憶が全くなかったんだっけ
「そうかな…、でも確かにここ数年の中だったら一番笑ってたかも」
輝の事も辛い過去の記憶も。
何もかも忘れていたただの女子中学生だったんだもん
…蒼桜の総長はやってたけどさ。
「まぁ、お前が本物の笑顔で笑ってたのは輝といる時だったよ
そりゃあ沢山悩んだだろうけど」
微笑みながら頭をポンポンと撫でられる
頑張ったな、そう言われてるようで視界が少しボヤけた
でも、素直じゃないから泣きたくなくて必死で涙を乾かした
「……っと、忘れてた。輝に連絡してくるな
めっちゃ心配してたから喜ぶぞー」
…え
「ま、待って奏矢!連絡しないで!」
部屋を出て行こうとする奏矢の腕を掴んで引き止めれば振り返って怪訝そうな顔を向けられた
「おい、なんでだよ」
「あの、ね…えっと…私…」
この決意を言うのは凄く怖い。
でも、言わなきゃいけない
だってそれが私の進む道だから
「族の世界抜けようと思う」
「…………は?」
それは輝の姫と蒼桜の総長を辞める、そういう事だ
「な……んでだよ…」
信じられない、そんな目を向けられて思わず顔を背けた
「私…どっか遠くの知らない街に行って1からやり直す」
だって、皆と一緒になんていられないよ
No.1である2つの族を手にかけたにも関わらず
悪魔と呼び声高い、人さらいのカンザキで
兄を自分の手で殺した
こんな汚れた人間、気高い蒼桜と輝の近くにいちゃいけない
族の世界とはいえ仲間を信じて強くあろうとする綺麗な人達に泥を塗ることなんてできない
私が傍にいるのは皆にとって害でしかないんだよ
ふと胸に押しつぶされそうな程の痛みが襲ってきてそっと服を握った
「お前はそれでいいのかよ。
アイツらと離れて大丈夫なのかよ?」
「大丈夫も何も奏矢達は知ってるんでしょ?私の過去。
大方、蒼桜の皆が言ったんだろうけど…。」
蒼桜の皆を責める事は絶対にしない
でも私には蒼桜か輝を選ぶ事なんてできない
私の過去を知って軽蔑されるかもしれない
そう考えたらとてもじゃないけど顔を合わせられないんだ
「…わかったから。そんな顔すんじゃねーよ」
奏矢の声が聞こえたと思えばゆっくりと奏矢の腕が肩にまわり、引き寄せられた
「そんな顔ってどんな顔よ。」
ちょっと恥ずかしいけど安心する奏矢の腕の中
張り詰めていた気が抜けて奏矢に体重を預けた
「辛くて仕方ないって顔だよ、ばぁか
そんなに辛いなら我が儘言ってもいいのによ」
「無理、だよ…」
やめてよ奏矢…。
一定のリズムでポンポンと頭を撫でられて
必死で固めた決意と強がりを簡単に溶かしていく
「ん、わかってるから。
お前のやりたいようにしろよ
…でも、今だけは強がるな。
今なら蒼桜も輝も来ないから」
「……っ……ぅ……」
なんで、そんなに優しいの?
どうして、なんでもわかっちゃうの?
つい我慢してた涙が溢れ出す
静かに涙を流す私に奏矢は
「お前は頑張ってるから少し休憩しろ、な?」
優しすぎる言葉をかけてくれる
「う、ん……」
だめだってわかってるのに何故か温もりを求めてしまった
私は奏矢に縋り付いて気持ちを吐き出すように泣いた
そして、頭に思い浮かんだのは数年前の私。
確か、家出して座り込んでたところにノエルさんが来てお店に連れてってもらった
それでノエルさんに呼ばれた奏矢と冬詩が倉庫で私の話を聞いてくれたんだっけ?
あの時はお母様とお父様が本当の親じゃないって知って、私と血が繋がってないから冷たいのかなって悲しくなったんだよね
受け止めきれなくて心にポッカリ穴が空いた私を沢山お世話してくれて心が戻ったとき、今みたいに抱きしめてくれたんだった
いつだって私は2人に助けられてた
ごめんね、冬詩
私ずっと貴方の傍にいたのに何も気付いてあげられなかった
沢山貴方に振り回されて傷つけられた、でも
それでも冬詩は私の大切な人だったんだ

