「ふふっ、彼の気持ちは本物ですよ」
「ちょ…っ!!紅羽やめてよ…」
こんな時にかわれるなんて。
もう…
…でも、もう一つ。
気持ちを操れるのが一瞬なのだとしたら
あの優しい冬詩も夜影の冬詩も冬詩の一部で。
どっちが本心なのかはわからないけど
私が見たもの全てが冬詩なんだと思う
それに、私は兄を殺してしまった
それは変わらない事実。
石が消えたとしても一生背負っていかなければいかない十字架なんだよね
だから…
もう一度、やり直そう
そう決めた。
「心は決まったみたいですね」
紅羽が言う
ほんとに、なんでもお見通しなんだから
「うん…。私はもう一度やり直すよ」
「ふふ、そうですか」
「紅羽は?あなたはこれからどうするの?」
「私は…」
私がそう聞くと紅羽は一度言葉を切った
そして、決心したように顔をあげる
「私も。もう一度やり直します
地獄か天国かって言われたら地獄だと思いますけど
月希と夜斗に沢山謝って來馬と…いやまた4人でいられるように力を尽くします」
少し不安そうに笑う紅羽
…あなたはきっと大丈夫だよ
だって3人はちゃんと紅羽を思っているはずだから
「そっか。じゃあお互い頑張らなきゃね」
「はい、辛くなったら空を見て私を思い出して下さい
私はいつでも紅愛さんを見守っていますから」
「ありがとう。
…じゃあね、紅羽」
にっこり微笑めば
「はい。
…色々ありがとね、紅愛」
首をこてん、と傾けて笑ってくれた
最後に見た紅羽の笑顔は無垢で可愛らしい笑顔だった
そして、紅羽と私はお互いに背中を向けて歩き出す
これが本当に本当の最後
長くに渡り多くの人を巻き込み苦しめた戦争は
今、終わりを迎えた
「んっ…………」
薄っすら目を開くと、見えたのは見知らぬ天井
でも薬品の匂いと幾度となくお世話になったので此処が病院だと悟った
「…眩し」
少しだけカーテンの隙間から溢れる日の光に目を細めて呟けば久々に出した声は掠れていた
そして、あぁ、戻ってきたんだと実感する
私が紅羽と話していた時間が現実でどの位の時間だったのかはわからない
1週間だった気もするしたった1日だった気もする
それでも時間はちゃんと進んでいた
1つの時間が終わりまた1つの時間が始まるんだ
いつまでも過去に縋り付いてグズグズしてられない
新しい1歩を踏み出すのにやる事は沢山だ。
目覚めて早々、気分が重い
でもボーっとしていても考えなきゃいけない事は減らない。
仕方なく寝起きで働かない頭を起こしていると
コンコン、と扉がノックされ目を向けた
サーとスライド式のドアが開けばそこに居たのはあの特有の白い服をまとった看護士さんで
「西条さん…っ!!目が覚めたんですね!!
あ、先生呼んできます!」
また慌ただしくパタパタと出て行った。
それからはまた慌てた先生が来て色々診察をされて
もう大丈夫ですよ。問題ありません。
と、微笑みながら去っていった
…ただ単に気を失ってただけなのにどこか異常でもあったんだろうか?
そうは思ったけど黙っていた
そして、後片付けを終えた看護士さんと入れ違いに入って来た…いや、飛び込んできたのは
「紅愛!!無事か!?」
「そ、奏矢…?」
息を切らせた奏矢だった
「は?目ぇ覚めてるし
…て、そういうことかよ。慌てて損した」
久しぶりに会ったのに1人でブツブツ話してるし。
なんか、こわ…。
じとーと視線を向けていると
「おい、そんな目こっち向けるな」
「え。ごめん。また頭のネジが飛んだのかと思って」

