「え…?」
どう、なってるの?
え、え…?
私、生きてる?
てかこの状況って…
背中にまわる腕、額にあたる鍛えられた胸板
そして、大好きな、あの人の香り
抱きしめられてる…?
「夜…斗…?」
頭の中がぐちゃぐちゃ。
思わず口から出た言葉は自分でも分かるくらい戸惑いを隠せていなかった
すると、少しだけ腕の力が強くなって
「月希…ごめん」
夜斗がそう言った
「…何、が?」
「俺、何もわかってなかった」
そこで夜斗は一息着く
私は夜斗の腕の中で静かに耳を傾けていた
「月希も知ってるけど俺は紅羽が好きだった
いつだって紅羽は希望だったから
來馬の事は親友だと思ってたし俺を救ってくれた
…なのに、來馬と紅羽は付き合った
その時、裏切られた気がしたんだ
また希望を見せて突き落とされるのかって
また信じて裏切られるのかって
また1人になるのかって思った
…月希はいつだって俺の味方だったのにな」
「夜斗…」
隠された夜斗の本音
弱音を吐かなかった彼が今は凄く儚い
「苦しくてこれ以上闇を見たくなくて…
來馬と紅羽をここから突き落とした。
…ふっ、俺もう人間失格だな」
「そんなことない!!」
思わず、叫んだ
そんなこと、ないのに
驚いたようにパッと私を見る夜斗
それを見て私も少し頭が冷静になった
「そんな悲しい事言わないで」
自分を否定しないで
声は小さくなっちゃったけどちゃんと伝えた
すると夜斗は目を細めて
「ありがとう」
と、笑った
不覚にもキュンと胸が高鳴った
それからしばらく無言が訪れた
「…………………」
「…………………」
どれだけ時間が経ったかはわからない
ふいに夜斗がふぅと息をついて
あのさ、と口を開く
私に回していた腕を解き真剣な眼差しに私は息を呑んだ
「もし、俺が罪を償って。
…その時きっと俺には何も無いけど
それでもまだ月希の気持ちが
変わってなかったら、さ…」
少し赤い頬、不安そうな瞳
全てに見惚れてた
うん、と相槌をして言葉の続きを待った
「俺と……「危ないっ!!!」
…それは、反射だったと思う
人より少しだけ耳がいい私だから気づいた音
"ピキピキ…"
と、なにかが壊れる寸前のような感じ
恐る恐る夜斗の後ろに目を向けると
「…………っ!!」
夜斗の後ろを平行にゆっくり進む
"亀裂"
…そういえば、この頃強い雨が続いてた
つまり、雨を大量に含んだ地盤は
脆い
無心で夜斗を思いっきり突き飛ばした
夜斗が目を見開きながら後ろに倒れていって
その時
「ピキピキ…ピキッ!!」
ガン!と音が鳴って
視界がぐらついた
さっきとは倍速で私と夜斗の距離は開いていく
…全部、スローモーションに見えた

