〜翔聖side〜


ピッ…ピッ…ピッ…


気が狂いそうな位一定の電子音


白に埋め尽くされた広い部屋に


ポツリと置かれているベッド


鼻をつく独特の匂い


俺はこの無の空間が嫌いだった


ここは…いつだって絶望の声がする


けど、こいつは


もっと辛い思いをしてきたんだよな


思わず目の前に横たわる手をぎゅっと握った


その瞬間少し肩が跳ねるのがわかった


この空間には慣れてしまったけど


いつも感じるこの異様な冷たさは全く慣れない


「紅愛…」


結局また何もしないままお前が傷ついた


"これはシリマナイトとインカローズの戦いです


絶対に手を出さないで下さい"


よく夢に出てくる青い龍、アオの言葉。


守ろうとした訳じゃねえ


何度も戦おうとした、なのに


アオは俺を止めた


石の力を使って。金縛りをかけやがった


けどその間にどんどん最後の戦いは進んで行った


聖蘭の幹部、No.1暴走族の総長でありながら


こんな時に何も出来ない俺は無力と同じ


アイツは自分を何も出来ない、そう言ったが


本当に無力なのは俺だった


「クソッ…」


石のせいにするつもりはない


けど俺の兄貴がアイツの兄を殺した


その真実、


消えない事実がある


俺がアイツの隣にいる事は許されるのか?


…これは俺が決める事じゃない


情に流されるんじゃなく真剣に考えて



コイツから聞きたいんだ


「早く目覚ませよ…」


自分の体温で少しだけ温かくなった手を離し頭を撫でた


少しの間顔を見てから病室を去った



~翔聖side end~























「う、ん…………」


ゆっくり目を開いた


見えるものは特に何もない。


あれ…私何してたっけ…?


冬詩と戦って翔と話して意識を失って。


ここは夢…?


まだぼやっとする頭で考えていると


「紅愛さん」


ふと、聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り返る


「ロー………ズ…?」


だけど、その声は確かにローズなのに


私の視界に入ったのは


私と同じ位の年代の赤い目をした女の子だった


「紅愛さん、私です。ローズです」


「え?…ローズって人間だったの?」


龍、じゃなくて?


思ったままの質問を口に出すと


ローズらしい女の子は静かに微笑んだ


「あの龍は私の仮姿


私、本当は人間なんですよ


そして、私の名前は…


紅羽



…貴方も聞いたことあるしょう?」


紅羽…。


「あの夢に出てくる?」


「はい。


これから私達に起こった全てを話します


そして、石の事も全て。」