【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~



その時、男の髪がキラリと光った


夜影というワードに戸惑っていたから気づかなかったけど


服装は制服のような全体的に黒いもので


まくってある腕からは数々の傷が見え隠れしていた



そのほとんどが古い傷だということもすぐにわかった


二人の間にサァーと風が吹き抜ける






「裏の世界はどんなところ?」


私がそう聞くと男は口角を上げて笑った


「この世界はな強い者が勝つんだよ


そして弱い者は消える


だから感情も友情も優しさも何もいらねぇ


表の世界では恐れられ裏の世界では羨望の眼差しで見られる


裏にルールなんてない、だから


正義を振りかざして悪になることなんて簡単だ


今の生活に飽き飽きしてんだろ?


そんな奴はもう足を洗うことなんてできない


一種のドラッグみてーなもんだな」


男が生き生きと語る裏の世界は


まさに私の求めるものだった


今を変えられるのなら


自分だって変えよう。



「…わかった。



私に裏の世界を教えて」


「ふっ了解」


これが私と夜影の出会い。


そこから私はその時人不足だった


人さらい部門に所属することになる


毎日訓練に励み前代未聞らしいスピードで上に登りつめた


通常1年かかる専門の武器を扱うことも


1ヶ月で成し遂げ夜影専属の鍛治職人に


最高の日本刀を生み出してもらった


その日本刀は今でも愛用している最高級品だ


最高の武器を手に入れて実力は更にぐんぐんのびた


そして気づけば一番上に手が届いていて


それと同時に同期はみんな死んだ


だからずっとソロで活動するようになっていた


周りからは私を悪魔の子と呼び冷徹残忍な人でなし、そう評価した


苦しいとか悲しいとかそんなの感じたことなんてなかったのに


自分がいざ頂点をとるとどうしようもない孤独感にさいなまれる


目標を失いただ任務を遂行する毎日


失敗はできないというプレッシャー


頂点の者にだけ向けられる妬みの目


裏の人間だとバレる恐怖


なんだか自分が自分じゃなくなったみたいで


…私は何かに押しつぶされそうになっていた


新しい場所を求め裏に来た筈なのに


何も、変わらなかった


ここままじゃ死ぬ


心も体も。


だから私はまた逃げ出した


逃げれば追われるし捕まれば殺される


わかってたけどそれでもいいと思えてしまったから…


そして任務の帰還中人目を盗んで逃走した私は


追っ手に捕まることなくまた表の世界に


何事も無かったかのように生き続けた


ただ日が過ぎるごとに思い出したのは


必然か偶然か石のことだけだった…