【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~



柊さんの切なすぎるその声が


この温かい温もりが


スーッと心に染み渡って。


そして少しずつ氷固まった心が溶けていく


「柊…さん…」


そんな事、ないのに


柊さんはいつだって優しくしてくれた


いつもみんなを気にかけて心配してくれた


本当に感謝してるの


その言葉は喉まで出かかっているのに


…言えない


それは多分




"お前が…っ…











お前が殺したんだろ!!この人殺し!


お前が死ねば良かったんだよ!!!"


その言葉が頭をちらついて離れないから


もう、遅いんだよ


ごめんね、柊さん


「もう…戻れないよ


だから私が終わらせる」


今度はほんとにサヨウナラ。


多分もう二度と会うことはない


今までありがとう


そう心の中で呟いて



柊さんの首に手刀をいれた


「っ…くれ…あ……ちゃ…」


私を抱きしめたまま力なく倒れる


「幸せに…なってください」


これから過去を受け入れられる日が来ますように


柊さんをゆっくり床に横たえ立ち上がる


私は今日


紅雅に会いに行くんだ


それはもちろん全てを終わらせるため。





















ザザザーザザザー



聞こえるのはその音と



ジャリ…ジャリ…ジャリ…




私が歩く度に聞こえる音


倉庫から歩いて15分位


私が辿り着いたのは










ーー海だった









「ここ、か」


そこは


"この先危険"


崖のマークがかかれた古びた看板が落ちている


もうほとんど役目を果たしていない冊を跨いで先に進む











空は闇のように黒く


美しい光を放つ月でさえ隠してしまう




…ジャリッ


だけどほんの少し見えた光で私は足を止めた



その瞬間ポロッと足元が少し崩れる


ここは…崖の最先端


下を覗き込むと広がっているのは黒。


まるでブラックホールのように引き込まれそうになる闇の色


もう…思い残す事はない


不思議と怖くはない、むしろ


安心している


そして最後だというのに


何も


何も


思い出さない


楽しかった思い出は沢山あるはずなのに


辛い事だって山程あったのに


何も思い出さない


…私は"無"だった



もう、いいや


こんな世界とは早く別れたい


そしたら紅雅に会う


それで天国では…いや、私は地獄かな


そこではまた来世に向けて頑張ろう


また生まれ変わったら幸せな人生が歩めますように



心の中でそう祈って再び下を見下ろす


下は真っ暗で見えないからわからないけど


波がぶつかる音がするから岩があるのかも


…当たったら即死。絶対痛いだろうな


そうは思うけど苦しまずに逝けるのならなんでもいい


月は闇に隠れた



じゃあ、お別れだ


私は足を前に










踏み出した