護身術。
こんな時のために習っておいたんだ
私は力を抜いてふぅーと息を吐く
チャンスはこれっきり。
全神経を集中させた。
そして手を動かしたその時
「っと、お嬢ちゃん。手荒な真似はやめてねー」
「………っ!!!!」
え…
もしかしてばれていた…?
この人ただ者じゃない
「俺ね、こう見えて結構忙しいの。
あんまり手間かけさせないでくれる?」
私を上から見下ろす瞳はぞっとするほど冷たく
思わず身震いをするほど
「そろそろ終わらせようか」
中川はそれを気にも留めていないかのようにニヤリと口角をあげた
そして私の手を掴む力が強くなって
「い……ったい…」
凄い握力っ…!
思わず眉間に皺が寄るのがわかった
銃が握られた私の手は勝手に動き
カチャッ
紅雅に向けて止まった
このまま引き金を弾いて撃てば私は
紅雅を殺す
そんなの
絶対
嫌だよ
「や…だっ!!!!!!」
私は必死に抵抗した
渾身の力で中川を振り解こうともがいた
だけど相手は大人
私は子供
所詮叶うわけなくて
中川はもっと強く私を押さえつけ
引き金をひいた
やめて。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
そんなのあんまりだよ
私が紅雅を殺すなんて絶対に嫌だ
この手でもう一度家族を殺すなんて。
「中川さん!!やめろ!」
だけどそんな時
一番近くでそれを見ていた東は中川につかみかかった
「チッ、東てめぇ何のつもりだ」
「俺はもう炎薇には従わない!
そして弟も父さんも俺が守る」
二人は私を挟んで揉み合う
もちろん私は東の味方だけれど。
でも
「仲良しごっこがしたいならさせてあげるよ
あの世でな。」
中川がそう呟いたあと
これは偶然だったのか必然だったのか
ふと東の手が私の手に当たって
パーン!!!!!
2度目の銃声が響き渡った
その音に全員の動きがピタリと止まる
恐る恐る顔を上げると
「うそ、だろ」
東は消えそうな声で呟いた
東の影から後ろを覗くと
「…………くっ………」
そこには横っ腹を押さえうずくまる
紅雅がいた
え、どういうこと…?
頭が全くついていかないんだけど
紅雅が
撃たれた?
でも待って。拳銃を握っていたのは私でしょ?
…私が殺した?
嘘
そんなの嘘だよ。
信じたくない。
私はそれを確かめるようにフラフラと紅雅に近付いた
「紅、雅…」
紅雅の横に座り肩に手を置く
すると
バタッ!!
紅雅は崩れ落ちた。
「はぁ…っ…はぁ……はぁ…」
傷口を押さえ荒い呼吸を繰り返して
それがとても苦しそうで
虚ろな瞳が私を捉えたとき
「紅雅ぁっ!!!!!!!!」
それが現実なのだと知ってしまった
「いやだ…そんなのって無いよ…」
不思議と涙は出なくてただ体が震えるだけ
必死で紅雅の服の袖を掴むけど
「くれ、あ…大…丈夫…だから…」
返ってくるのはそんな弱々しい姿
ふと目を移すと紅雅の横っ腹からは
赤い鮮血がどんどん溢れて止まらない
これじゃ、死んじゃうよ…!
私は傷口を紅雅の手の上からぎゅっと押さえて振り向く
「東っ…!救…急車…救急車お願い!!」
「あ、あぁ」
東は戸惑っていたけど携帯を操作してるから
きっと大丈夫。
でも紅雅は
「ずっ…と…笑顔…で…い…てな…?」
血だらけの震える手で私の頬に手を伸ばす紅雅
「なん…で、なんでそんな事っ…言うの!?
死なないでよ…………!」
まるでもう終わりという言い方に
私は必死でその手を握った
「ごめん、な………色々…
跡継ぎ…の事も…お前をっ…巻き込んじま…って…」
「そんなの…そんなのいいよ!
紅雅が生きててくれたらもうそれでいいよ!」

