「こんな子供殺せるわけねぇよ…」
東が呟いたその言葉にはどれだけの苦悩があったんだろう
7歳下の弟がいるって事は多分私と同じくらいの年
きっと弟と重ねてる
私はしゃがんで東と視線を合わせる
そして手をぎゅっと握ると
東は驚いたようにパッと私を見る
だけど視線は外さない
「本当は殺し屋なんて嘘なんでしょ?
人を殺した事なんて無いよね…?」
「…………っ」
目を開き息を呑む。
その行動は肯定を示していた
「ならきっとまだ大丈夫」
根拠なんて無い。
だけど東はそんな人じゃないって思えたから
「おーい、どんだけ道草食ってんのー?」
その時、後ろから声が聞こえた
東がビクッと肩を揺らし目を見開く
私もゆっくりと振り返ると…
視覚に入ったのはポケットに両手をつっこみだるそうに立っている赤髪の男
いつの間に…?全く気づけなかった
気配を消していたんだろうけどうますぎる
「中川…さ、ん…」
中川…?
中川って、あの?
「帰りがおせーから死んだのかと思って来たら
元気そうじゃねーか」
「それは…っ…」
口ごもった東に中川はフッと笑いを零す
そしてゆっくり私達に近づいてくる
「まあいいや。どうも初めまして
現炎薇総長の中川ーnakagawaーって言いまーす」
予想は的中した
この人が炎薇を悪にした張本人
こんな状況なのにニコニコしている態度に寒気がする
「中川さん、あの…」
「ん?」
「この子達は見逃してもらえませんか」
東、何言ってるの?そんなことをしたら…
「あれ、家族はもうどうでもいいの?」
卑怯だ。こんなの
「違います…。でもこんな子供殺せません」
これまでにどれだけの人をこうやって苦しめたの?
「ほぉ。お前は自分の弟より他人を選ぶのか」
なのに今もこうやって嘘をつき続けて。
「…………っ」
「そ。まあいいけどね」
私は怒りで中川を睨み付けた
だけど私の視線に気づき目が合うと
ニッコリ微笑んで
グイッ
一瞬の出来事だった
視界が揺れたと思ったら
私の首には腕が回され
手には…拳銃を握っていた
「紅愛っ!!」
紅雅が叫ぶ
今すぐ近寄りたいだけど
私の力じゃどうしようもなくて
「紅雅ぁ…!」
予想しなかった事に段々恐怖に支配される
怖がるな、怖くない。
そう心の中で呪文のように唱えるけど恐怖は全く拭えない
こんなのあの時と同じじゃない
私はあの時からこれっぽっちも変わってないの?
このままじゃ大切な人がいなくなってく
また失うの?
また…あんな思いをするの?
そんなの嫌だよ…
何か、何か方法があるはず。
私は恐怖に耐えながらぐるぐると思考を働かせていた
…そうだ

