【完】MOON STONE ~美しき姫の秘密~




「…違う、そうじゃない」


「え?」


いきなり聞こえた声に戸惑っていると


がっちりと肩を掴まれ、ぐるんと視界が反転する


ピントがあった目に写ったのは玲さんだった


「くーちゃんを隠せなかったのは僕らが甘かったから!


それに仁が言いたかったのは、邪魔だなんて事じゃない。


"それでも守る覚悟はあるし力もある
だけど万が一を考えて注意して動いて欲しい"
ってことだよ


僕たちはくーちゃんが思ってるよりも遥かに
くーちゃんを仲間だと思ってる。
それも紅雅の妹じゃなくーちゃん自身を見てるよ」




そうなの…?


私はもう本当の仲間?一人の人として認められてる?


そっか…


私が勝手に勘違いしていだけなんだ


私はどこかで紅雅の代わりになって苦しむ自分を悲劇のヒロインだと思い込んで。


自分には仲間なんかできない、紅雅と同じにはなれない。そう決めつけていただけだったんだ



「お前は母さん達の束縛人形じゃない


俺達の仲間なんだよ








"絶対に邪魔なんて思ったりしない"」



「…あり……が……と…」


泣きそうだった。


でもみんなが優しく微笑むから


私も笑った


だけど私は気づいてしまった


…仁さんと玲さんの矛盾に。







そして4人が隠している秘密がある事を知る








その頃、世間では


"西条グループ、規模拡大。世界の西条へ"


"異形!暴走族が安全を守る"


"No.1暴走族、炎薇と輝が街をPR"


と、日本中に変化が巻き起こっていた












「ん。じゃあまた明日な」


「わかった、ありがとう」


時刻は深夜2時


最近、私は舞龍にいることが減った


皆には疲れているからと言っているけど


実際は………



カチカチカチ…


そう、ハッキングだ


相手は炎薇


理由は簡単。一番情報が掴めそうな族だから


だけどさすがNo.1なだけあってなかなかロックが外せない


きっと会議で使った資料や電子メールの内容を見れれば沢山の情報が見れるはずだから


諦めるわけにはいかないんだ


今日は3時間ほどパソコンに向かった



その翌日。学校から帰ると


「「「お帰りなさいませ!紅愛様!!」」」


と、いつもの様にメイド達が列を作って私に挨拶をする


一体なんのために毎日こんな事をしてるんだか。


「ただいま」と呟きその真ん中を通り抜けると


「紅愛様。」


と誰かに呼び止められ振り向く


「なに?白石」


相手は白石。私の専属執事だった


「祐様と優里香様がお呼びです」


「っお父様とお母様が…?」


帰国していたんだ…


「すぐ行きます」


「はい、お気を付けて」


気をつけて、か。凄く嫌な予感しかしなかった



いつからだろうこの家がこんなに凍って見えたのは



いつからだろう


コンコン…


「紅愛です。失礼します」


親の帰りを全く喜べなくなったのは


それどころか恐怖しか感じなくなったのは





手が震える程緊張しながら扉をあける


「…………っ!!!」


するとそこには



破り捨てられたテストが私の足元に散乱していた


一際目に付くのは89/100と大きく赤で書かれた紙

最低ノルマ95を遥かに下回った点数


「西条家の名に泥を塗るような事は慎みなさい」


西条家の名…


「ですがお母様、このテストは過去最難易度でしたし


順位は1位で…「パシッ!!!!」


一瞬なにが起こったのかわからなかった


気づいたら宙を浮いた体


何かにぶつかったかと思えば


パリンッ!という音と共に鋭く痛む手足


「お前はただ西条家に相応しい人間になればいい


それができないのなら存在する意味は無い」


頭の傍らでお父様の声が何度もリピートされる


ふと目を移すと私の周りは水びだし


そしてその水を段々と赤く染めるのは



私の血だ


その光景はやけにリアルで。


私だって友達はいたし夢だってあった


それなのに


心を奪われ自由を奪われ


私の生きている理由は西条家のため


私は最初から出来の悪い操り人形だった


そんな決められた人生


それを塗りつぶす勇気が欲しかった


二人に逆らう勇気が欲しかった


だけどそれすらも持ち合わせていない私













ねえ。




タスケテ


心の声は誰に拾われる事もなく消えていった