あまりの勢いに慌てて後ずさろうとしたものの、西山くんの机があってそれ以上下がることは出来なかった。
瞬く間にすぐ目の前にまで来たかと思ったら、いきなり胸ぐらを掴まれた。
そのまま立たされて、目線が彼女達とほぼ一緒になる。
ただ、今私の胸ぐらを強く掴んで離さない女の子だけ、ずばぬいて背が高い。
近くからよく見ると、顔立ちも大人っぽくてすごく綺麗。
ただそこに立っているだけで華がある感じ。
そういえば、この女の子が好きだっていう男子の噂も結構よく耳にするな。
確かに、女の私から見ても黙っていたら超絶美人だけど。
「(口開くと魔女みたい)」
「魔女!?」
「あ」
どうやら私は、思っていることを無意識に声に発してしまう癖があるらしい。
なんて、呑気に思っている場合じゃなかった。
次の瞬間、耳元でパシッと乾いた音が聞こえたのと同時に頬に強い痛みが走った。
掴まれていた首元から手を放されて、力を抜いたままの身体は抵抗することなく床になし崩しに倒れる。
よほど情けない姿だったのだろう、女の子達がクスクス笑う。
真ん中の子に至っては、これまた恐ろしい形相で見下してくる。
その瞳の奥は笑ってなんかいない。
魔女って言ったのは、さすがにまずかったかな。
いやでも、思うことは自由だ。
「外見がブスなら中身もブスね。いつまでも西山くんに付きまとってんじゃないわよ!」
「そうそう。全然不釣り合い」
「真由美。もっと言っちゃいなよ」
真ん中の子がそう言ったのを合図のように、後ろで一言も発していなかった子達も次々と口を開く。
魔女さんは真由美というらしい。
名前もこれまた綺麗だ。
随分と好き勝手に言われているのに、全く頭にこないのはやはり私が鈍いからなのか。
いや、多分それ以前の問題だ。
「あんたなんか、さっさと別れちゃえばいいのよ!」
「あの!ひとつだけ言わせてもらいますけれども!西山くん
て、本当はすごく格好悪いんだよ!」
「……はぁ?」

