西山くんが不機嫌な理由






少女は両手に雪見大福の容器、俺はそんな彼女の食べ掛けのアイスを片手に駄菓子屋から出る。




ここで別れるかと思っていたが、進む道の方向が同じだったらしく、ふたり肩を並べて歩く。



「ふんふんふふーんふんふふん」



女の楽しげな鼻歌を耳に挟みつつ、隣に合わせて歩幅を狭くする。




そういえばと、最近の記憶を掘り起こしてみる。



女という女と口を聞いたのなんて、かなり久しぶりのような気がする。



「ねねっ、お兄さん見て見て!おもちって伸びるんだよ!」

「…………」

「ほらほら!みよーん、て!すごくない面白くないっ?」

「…………」

「私"おもちみよーん"好き!」

「…………」

「お兄さんもやろう!」

「…………な、」



全て適当に聞き流そうと思っていたのに、女がおもちを楊枝で刺して顔の前まで持ってきたため、反応せざるおえなくなった。




今にも口の中に無理やり突っ込ませてきそうな勢いだ。



下手したら喉元に詰まって大惨事を引き起こしかねない。




いやいやと首を横に振って拒否反応を見せれば、意外にも聞き分けの良かった女が伸ばしていた手を引っ込めた。



「そっかー。ごめんよー」

「…………」

「おもちはおもちでも、お兄さんは雪見大福より柏餅派なんだね」

「(…………桜餅派)」