「京介、知らねーの?クライフ」




だから聞いてるんだ。




「ええか?」




高柳が急に立ち上がる。
危ない。




「ヨハン・クライフっちゅうのはな、オランダのサッカー選手で伝説になった人や。ドイツでいう「ベッケンバウアー」、ブラジルでいう「ペレ」、アルゼンチンでいう「ステファノ」や「マラドーナ」みたいなもんやな」




ごめん。
全員わかんない。




「しかもや、お前がつけとるその14番は、クライフの番号なんやで」




「え?14?」




俺は、自分のかばんからユニフォームを出した。
汗くさい、少し汚れている14番。




そういえば、今日の俺の言動やプレーは
自分の無意識のうちにやっていて
まるで自分じゃなかったみたいだった。




あのうまいプレースタイル、試合を最後まで諦めない気持ち。
それはまるで・・・




「まさか・・・な」




俺はユニフォームをかばんに押しんだ。




その瞬間、身体がすっと軽くなったような気がした。