そう、僕の目のまえでアイスコーヒーのグラスを傾けているこの人は、石黒先生こと、旧姓倉井先生だ。
今では中学校で欠員が出たときだけ臨時で美術教員をしながら、家では育児もしつつ、絵画制作に励んでいる。
大きな賞を受賞したことでその名は広く知れ渡り、いまでは絵画の世界の新鋭作家として注目されているんだ。
この里山アート制作だって島側から招待されて滞在しているというのだからあっぱれな話だ。
しがないいち美大生で授業の一環として来ていて、しかも周りは上級生ばかりでほとんど雑用係になっている僕としては、大きく水をあけられてしまったなあというところだ。
「いろんな作品に触れて刺激を受けて成長してほしくて、先輩も連れてきてくれたんじゃないかしら」
数日前、アート制作者の懇親会の席で僕はつい本音を漏らしてしまった僕に、先生はそう言った。
慰めてもらっても……そんなの言われなくてもわかってら!
「そのうち絶対追いついてやる」
僕が悔しさを露わにしたら、先生は泣き笑いのような顔になった。
「え、ちょ、ちょっと、どうしたの」
「なんでもありません。ただうれしくて」
涙はほんの一滴だけで、気づいた人は僕以外にはなかった。
今では中学校で欠員が出たときだけ臨時で美術教員をしながら、家では育児もしつつ、絵画制作に励んでいる。
大きな賞を受賞したことでその名は広く知れ渡り、いまでは絵画の世界の新鋭作家として注目されているんだ。
この里山アート制作だって島側から招待されて滞在しているというのだからあっぱれな話だ。
しがないいち美大生で授業の一環として来ていて、しかも周りは上級生ばかりでほとんど雑用係になっている僕としては、大きく水をあけられてしまったなあというところだ。
「いろんな作品に触れて刺激を受けて成長してほしくて、先輩も連れてきてくれたんじゃないかしら」
数日前、アート制作者の懇親会の席で僕はつい本音を漏らしてしまった僕に、先生はそう言った。
慰めてもらっても……そんなの言われなくてもわかってら!
「そのうち絶対追いついてやる」
僕が悔しさを露わにしたら、先生は泣き笑いのような顔になった。
「え、ちょ、ちょっと、どうしたの」
「なんでもありません。ただうれしくて」
涙はほんの一滴だけで、気づいた人は僕以外にはなかった。


