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 高校では三人の女の子とつきあった。
 同学年だったりひとつ上だったりしたけれど、みんな僕と倉井先生のことを知らない、別の中学から来た子だった。
 そのうちのひとりは、以前僕が声をかけたことのある女の子らしかった。

「ね、憶えてる? 入試のとき、春都くんに試験の出来を聞かれたの」
「憶えてないけどナンパには成功したみたいだね」

 あははと彼女は笑い、じゃあつきあっちゃおうよと言った。
 僕はそうしようと頷くだけでよかった。
 他の子とつきあうときもそんな調子で、僕の片想い期間はゼロ。
 来るもの拒まず去る者追わず。

 別れ際になって、なにを考えていたのかわからなかったと言われたこともあった。
 わからないから惹かれたんじゃなかったの?
 もっと知りたいからそばにいたんじゃないの?
 思いをぶつける気すら涌かなかった。

 もしもこの世からすべての不可解が消えたら、僕だったらなにに対しても興味を持てなくなってしまう。
 絵筆は持てなくなる。