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 委員長から電話があったのは、八月のある豪雨の朝のことだった。
『倉井先生、無事出産。名前は……』

 中学にも連絡網があったんだな、と今更ながらにぼんやり思った。
 それに、雨音で聞き取りにくかったけれど、出産と言わなかったか。
 聞きなれない単語だった。

 僕が耳から入る情報を処理しきれていないというのに、相手はなにやら喋り続けている。

『よかったな、ソウヤマ』
「うん」
 適当に相手をしているうちに電話は切れた。

"名前ははるとだって"