翌日からの放課後、美術室に潜りこんでひたすら絵を描くことにした。5人しかいなくて、しかもだべっている美術部部員より、僕ははるかに勤勉だ。
 顧問がまたいい加減な人で、僕が『部員です』と言ったら、鵜呑みにしてくれた。なんとたこ焼きの差し入れ。
 OH YEAH!(今度は正解)

 物事というのは、なにかしら障害があったほうがはかどるらしく、僕の意欲作『葉子(仮)』(もちろん倉井センセのファーストネーム)の進行状況は良好といえた。
 絵の具を乾かす合間に、美術部員に混ざって、クロッキーや水彩画なんかにも手を出した。1年生部員の女の子をスケッチして、調子こいてサインまでつけてプレゼントしたときには、涙ぐまれてしまった。その後、そういう依頼が部活以外からもきて、いちいち引き受けていたらきりがなくなって、じきにやめた。
 帰宅時間はたいてい午後6時。居残り勉強ということになっている。ベターな嘘。
 母はそんな僕を疑ってはいないようだった。完全に『創作活動休業中』と信じているようだった。