それにしても、お父さんに親孝行か………


それは私が唯一、したくても出来なかったことであり、そして、これから先二度と叶わないものでもある。


お父さんに対しては親孝行どころか親不孝なことしか出来なかったからそれが心残りだった。


「俺は唯那と出逢う前は、ずっと親父のことを恨んでた。
親父は俺が生まれてからもずっと仕事で……
家に帰って来たことなんか数えるくらいしか無かったし、親らしいことをされたこともなかった。
それなのに後を継げっていう言い分だけは通す。
だから嫌いだったし、後を継ぐ気にもなれなかった。」


私のお父さんは休日には必ずどこかへ連れて行ってくれたけど、それがどのお父さんにも当てはまるわけじゃないもんね。


「でもな、俺、唯那と出会って変わったんだ。」


「え?」


「俺は昔から親らしいことをしてくれたことがなかった両親をずっと恨んでた。
でもな、唯那の親父さんの話を聞いて思い出したんだ。」


「うん。」


「……確かに、俺は親から直接両親から愛情を注がれることはなかった。
でもな、俺の誕生日やテニスの大会で優勝した時、他にも何か祝い事があれば沢山のプレゼントとメッセージを送ってくれてたんだ。」