私はコートの真ん中で行う最後の挨拶を終わらせると、皆の元に戻ろうと転校生に背を向ける。

「佐倉唯那。」


何故か転校生にフルネームで呼び止められ、反射的に振り返ってしまった。


「何ですか?」


冷静に戻った私は、普段と変わらないトーンで問いかける。


「俺がテニスで負けたのはお前で2人目だ。
まさか、日本にあいつ以外で俺に勝てるやつが居るとは思いもしなかった…………」


そういえば、転校生の挨拶の時に俺を負かしたあいつにリベンジするって言ってたっけ。


その負かしたって、テニスで負けたってことだったんだ。


「それと、俺はお前に惚れた。」


その言葉にはそこに居た人全員がざわついた。


「さっきのは半分冗談のつもりだったが、今は軽い気持ちじゃねぇから。」