「な、何で負けたらあんたの彼女になんかならないといけないのよ。」
いきなりのことに、私は思いっきり噛んでしまった。
どうしたら勝負に負けたら私が彼と付き合うっていう発想が出て来るの?
「何でって……俺があんたを気に入ったからに決まってるだろ?
ということだから、俺の彼女になりたくないんだったら死に物狂いで戦いなよ?
マネージャーさん?」
いいよ、やってやるよ!
別に勝ちさえすればこの人と付き合うことなんてないんだから。
そんなこんなで負けられない試合をするハメになったわけだけど…………
私は今日、テニス部に復帰したばっかりでラケットを持ってきているわけがなかった。
「唯那、これ使え。」
そう言って俊輔くんに渡されたのは、いつも俊輔くんがいざという試合で必ず使用するラケットだった。
「ありがと。」
「…………まぁ、俺が言える立場じゃねぇのは分かってるけど、絶対に負けるんじゃねぇよ。」
「分かってるよ。」

