「俺は昔から後継者ってちやほやされてるけど、俺自身は後継者って立場を良く思ってない。
責任は重大だし、俺なんかが出来るはずねぇって………」


確かに世界トップの企業の頂点に立つってことは私なんかが想像出来ないことだと思う。


「でも、俺には兄弟が居ないから自分が継ぐしかないってことは分かってたし、ただそれまでの時間を逃げてるだけだったんだ。」


「…………」


私は西園寺の言葉一つ一つにしっかりと相づちを打つ。


「今回、親父が倒れたのが軽い過労で良かったけど、もしこれが悪い知らせだったらって思うと……
俺は何の親孝行もしなかったことを後悔するだけだったと思う。
そう考えたら後悔する前に出来る行動をやろうと思って留学を決めた。」


「…………うん。」


「今、俺が出来ることは留学しながら親父の元で勉強して早く後を継ぐことだけだ。
だから親孝行をする為にも1年留学を早くする。」


「うん。」


真剣に話す西園寺を見て私から言うことは何もなかった。