ようやくもう一度仲良くリベンジが始まったと思ってたら、相変わらずの麻子の友達付き合いはエスカレートしていった。

僕は終わりが見えていた。
僕は新しく、既に一度切った女達と再度連絡を交わしていたんだ。

麻子の暫くぶりの電話は、僕が受話器を取った瞬間から解っていたんだ。

以下、麻子の飾り方。


『楓君、御免なさい。あたしはズルイ。
楓君と会って居ない間、あたしは3人の男と浮気をしたの。

あなたはきっと幸せになれる。
あなたをきっと幸せにしてくれる人は必ず居る。
でもね楓君。
あたしは楓君をずっと好きでいい?

どんな形だとしても、貴方をずっと好きでいい?
楓君の歌や話や、これからの彼女の話も聞かせて欲しいの。

あたしね。
あたしは…誰にも必要とされてる感覚がなく育った。
あたしはね…あたしが必要で仕方ない人が、あたしには必要なの。

だから今の人をあたしは必要なんだ、楓君。
楓君の事ね、あたし…

いっぱいいっぱい愛していたの。』


僕は友達になんてなれないと電話を一方的に切った。


あれから時は経ち、17歳の、雨の日の夜、なんらかの形で麻子と会った。
ケバケバしい麻子の模様がアルコールに溶けて、麻子の話を飲みながら聞いていた。

泊まりなよ、と酔った麻子は言った。
僕は『彼女が家で待ってるから』と言ったら、麻子は寂しそうに笑って

『外、雨だから、傘持って出なよ?』と言い
玄関で傘をさして持たせてくれた。


麻子が僕に向けた中学三年の、あの曲。
省略しながら…ね。


『転んだときだけ気付くコンクリートの硬さ
失って寂しくって歌うあの日のラヴソング

思い知らせてよ
君の偉大さを

自分に嘘をつくのが
だんだんうまくなってゆく
流れ行く時代にしがみつく僕を
笑い飛ばしてよ』



「何その歌?元カノのアレ?」

「そ。なんか昔の。」

「へー中学生なのに難しい歌詞を馬鹿なあんたに…」

「お前に言われたくねーよっ!」


【終】