――そして、今さらながらにふと気づく。


私は今まで、『イケメン』やら『完璧』やらを言い訳にして

『田所くん』自身をちゃんと見ていなかったことに。


田所くんだって、恥ずかしい勘違いをしたり、恋をしたりする――

同じ人間なんだって事に気が付かないフリして、

『自分とは住む世界の違う人』なんて勝手に壁を作っていたことに。


そしてその壁に気づいた今――今まで以上に身近に田所くんの事を考えられるようになっていることに。



(うーん……これはもしかしたら、意外とすんなり成瀬くんのこと諦められるかもしれないなぁ)



そんな予感じみたものをボンヤリと感じつつ、私は笑いすぎて目の端に浮かんだ涙を袖の端で拭う。


屋上を照らす夕日が、いつもより鮮やかに見えた気がした。