………う、嘘だ!


絶対に嘘だ!!あたしから隠したし!!



ど、どうしよう……自慢じゃないけどあたし細くないし……


こっ、骨折なんてしていたら……!!



「じゃあ、手を見せて下さい!」


「別に、問題な……」


「いいから!!」


「っ、おい」



あたしは桜坂くんの言葉は無視して彼の手をとる。


彼の綺麗な手にはあたしの踏んだ靴あとが……


しかも少し切れて血が滲んでいる。



さぁっと血の気が引いた。



ど、どうしよう……どうしよう!!


赤くなってるし、ものすごく痛そうだ。



「ご、ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……」



あたしの不注意で怪我させちゃうなんて……泣きそうだ。


いや、さっきまでは違う意味で泣きそうだったけど。



「ごめんなさい……」



だんだんとあたしの声は小さくなっていった。



「いや、別に大丈夫だし……」


「嘘っ!あたし重かったでしょ?こんなに赤くなっちゃって……骨折でもしてたら……」


「これぐらいで骨は折れたりしない」


「え?ほんと?」


「あぁ」



よ、よかったぁ………



ほっと胸を撫で下ろす。



そのときふと目線を上げると、桜坂くんの隣に小さな容器が置いてあるのが見えた。



「あ」



あれって……



「今度は何?」



桜坂くんは呆れたようにあたしを見る。


と言うか桜坂くんって教室でも話さないし、こんなに話しているところ見たの初めてだな。


高くなく、低くなく、とても心地よいいい声……



って!!今はそんなことじゃなくて!!



「もしかして、シャボン玉の人?」


「……は?」



桜坂くんは訝しげな瞳をあたしに向ける。



「あ。えと、あたし教室で補習受けてて、それでいつもシャボン玉あがってるなぁー、って思ってて……」



言いながら、そういえばシャボン玉が上がってるときは桜坂くん教室にいなかも、と考える。


それ、と言ってあたしが指差した方に桜坂くんは視線を向けた。



「あぁ……これか」



桜坂くんは合点のいった顔をしてシャボン玉を吹いた。