あたしは桜坂くんの言葉に必死に耳を傾けて、彼を見つめた。


それが、今のあたしにできる唯一のことだと思ったから。


ぴたり、とあたしの目の前で桜坂くんが止まる。





「俺は、宗田が……宗田 藍巴が、好きです」





彼の口から紡がれた言葉に、あたしの目から、ポロリと涙がこぼれた。



「俺と、付き合ってくれますか?」



そう言って、桜坂くんはその手をあたしに向かって差し出した。


少し、緊張したような桜坂くんの顔を見つめる。




思い出すのはこの夏の日々。


あたしたちが過ごしたのは短い間だったけど、でも、確かに心の深いところに存在している。


心の中に、かけがえのないものとして存在している。



あたしは一度涙を拭って桜坂くんを見上げた。


真っ直ぐ見つめて、微笑むの。




あたしも、桜坂くんが好き……




その気持ちが伝わるように。



そしてあたしは桜坂くんの手に自分の手を重ねて言った。




「はい……!!」




ぎゅっと、優しい温もりに包まれる。









青い空



のぼっていくシャボン玉



笑いあった二人の手には、あの日のさくらんぼが輝いていた――――













Fin.