あたしは先生の話を右から左へ聞き流す。
だって毎年おんなじようなこと言われてるし。
だいたいみんなも他の子たちとお喋りをしている。
「はぁ……」
桜坂くん……
先生が入って来ても、その席は空いたまま。
夏休みの間、そりゃ考えることといったら桜坂くんのことで。
あたしの告白、どう感じたかな、とか、また前みたいに話せるかな、とか……
その前に、あたしはちゃんと桜坂くんと会えるのかな……
会うのは、正直に言うと怖い。
また拒絶されるのは、いくらあたしでもショックだし。
……それでも会いたい、話したいっていう想いの方が強いんだもん。
恋ってすごいな、ってしみじみ思う。
「はぁ……」
あたし何回ため息ついてるんだろう。
ため息ついたら幸せ逃げるって聞くよね。
これじゃ幸せの大半消えてるんだろうなぁ。
再び出そうになったため息を噛み殺して、あたしは外を見上げた。
「あ……!!」
シャボン、玉……
「どうしたー、宗田」
いきなり席を立ったあたしを、先生や他の生徒が見る。
いつもなら恥ずかしいとか思うんだろうけど、今あたしの中にある想いは一つだけだった。
「……先生、胸がいっぱいなんで保健室行ってきます。
ついでにサボりの人を連れてきます」
「はぁ?おい、宗田!?」
先生の返事も聞かずにあたしは教室を飛び出した。
……桜坂くん………桜坂くん………!!
あたしはがむしゃらに階段をかけ上がる。
まだ、会って何が話したいとか、どんなふうに接すればいいかとか、そんなの分からないけど……
会いたい……あなたに………
会いたい………!!
最後まで上りきり、あたしは息を整えることさえせずに、体当たりするように屋上の扉を開けた。