みんなから不良と言われていて、あまり話しているところとかは見たことがない。
あ、唯一仲良さそうな人はいたかも。
確か隣のクラスの……
って!
そんなこと考えてる場合じゃない!!
頭は真っ白。
謝らないといけないのは分かっているけど、さっきから口はパクパクするだけで言葉は出てこない。
だらだらと冷や汗が背中を流れる。
そんなあたしを見て彼……桜坂(オウサカ)くんは冷たい視線を送りながら口を開いた。
「……足、退けてくんない?」
「……!!」
そ、そうだ!謝る前にそれが一番しなくちゃいけないことじゃんあたし!!
「ごごご、ごめんなさいっ!!」
あたしは素早く足を退けて土下座をする。
だ、だって相手が座ってるんだし、あたしが立ったまま頭下げるのもなんかヘンだし……
そ、それより!ど、どうしよう……どうすればいいの、あたし!!
相手はあの不良と有名の桜坂くん。
こ、怖いっ!!
あたしどうなるの?
もしかして……あたし、今日が命日になるかもしれない……!
うぅ……桜坂くんからの視線を感じる。
まさに蛇に睨まれた蛙状態だよぉ〜〜!!
「……別に、」
「へ?」
想像と違う桜坂くんの答えになんとも間抜けな声が出たあたし。
て、てっきり殴れるもんだと……よしんばお金を巻き上げられるもんだと思っていた。
顔を上げると桜坂くんの真っ直ぐな瞳があたしを見ていた。
そのことに少し胸が騒ぎながらも誤魔化すようにあたしは口を開いた。
「あの、手……だ、大丈夫なの…?」
「……あぁ。別に問題ない」
そう言いながらさりげなく桜坂くんは手を隠した。