あたし、次第……



その言葉に少し体が緊張するのが分かった。



「伝えたかったのはそれだけなんだ。それじゃあ……」


「ま、待って!」



あたしは教室に向かおうとする沢木くんを呼び止めた。


不思議そうにこちらを向いた沢木くんは、やっぱり見た目は王子様だな、とぼんやり思う。



「そ、その……なんで、あたしに力を貸してくれたの…?」



沢木くんとあたしに接点なんかこれっぽっちもない。


というかあたしは名前すら知らなかったし。


なのに、そんなあたしに力を貸してくれるなんて納得がいかない、というか、不思議というか……



「別に、君のためってわけじゃないんだ」


「え?」



どういう意味?


目線で問いかけてみるけど、沢木くんは爽やかに笑ってあたしを見るだけ。



「藍巴ちゃんには感謝してるよ。
空を変えてくれたのは藍巴ちゃんだからね。
……藍巴ちゃん次第、っていうさっきと言葉は矛盾しちゃうけど、空のこと、よろしくね」



それだけ言って、沢木くんはあたしに背中を向けて戻っていった。


一方あたしは……



「どういう意味?」



沢木くんの言葉の意味が分からなくて、しばらくその場で考えていた。




このあと授業に遅れてしまったのは、沢木くんのせいだということにしておこう。












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「きりーつ、礼」



号令と一緒に騒がしくなる教室。



つ、ついにお昼休みが来た……



「アイ……」


「真琴」



さっき真琴には沢木くんのことは言ったから、あたしが屋上に行くことは知っている。



「アイ、わたしはそんなに偉そうなことは言えないけど……アイが後悔しないように、頑張ってきなさい」


「真琴……うん、頑張ってくるね」



にこりと綺麗な笑顔で真琴はあたしを見送ってくれた。