「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね。
僕は隣のクラスの沢木 旬(サワキ シュン)、よろしくね」


「……よろしくお願いします」


「あはは、警戒心むき出しだなぁ。
まぁそんなに顔真っ赤にして睨んでも全然怖くないけど。
むしろもっと苛めたくなるからやめて欲しいかな」



……今、この人爽やかな顔ですごいこと言った気がする。


なんか第一印象が崩れていく音が……


茫然としながら見ていると、その、沢木くん?は困ったように笑った。



「まだ思い出してくれないかな?
話すのは初めてでも、会うのは初めてじゃないんだよ?」



初めてじゃない?


……確かに、見たことあるような気がしたけど。


どこで……


うーん、と考えるあたしを沢木くんはにこにこしながら見つめる。


そのとき、ふわりと沢木くんのダークブラウンの髪が揺れた。



「………あ」



思い出した!!



「桜坂くんと仲がいいダークブラウンの人!」


「やっと思い出してくれたね」



よかった、と言って笑う人をあたしは改めて観察する。


ダークブラウンの髪はしっかりセットされていて、身長だって桜坂くんとそんなに変わらないぐらい。


顔だってすごく優しそうで、例えるなら王子様、みたいな?


……まぁ、さっきの台詞からそこは疑われるけど。



「それで、その沢木くんがあたしに何の用事?」


「あ、そうだったね。
実は、ここ三日間ぐらい君と空を見てたんだけど、藍巴ちゃん、空と話できてないでしょ?」


「うっ……」



おっしゃる通りで……



「空も空で藍巴ちゃんのこと避けてるみたいだし、」



まじですか。


気づかなかった……



「そこで、二人の話し合いの場を設けようと思ってね」



にこりと笑う沢木くん。



「今日のお昼休みに屋上に行ってくれるかな?
僕が空を絶対に屋上に向かわせるから。
そこからどうするかは、藍巴ちゃん次第だよ」